「Roma(ローマ)」が、アカデミー賞外国語映画賞、監督賞、撮影賞を受賞してから、メキシコ映画に対する注目が一気に加速しました。
メキシコには「Roma(ローマ)」だけではなく、他にも面白い映画がたくさんあります。メキシコ人は想像力や表現力が非常に豊かな人種であり、国内で抱える様々な問題、それに翻弄される人々の姿を描くのが本当に得意です。
そんなメキシコ映画の中で、ここ15年で一番印象に残った面白い最新映画10選をご紹介いたします。
目次
1.ルース・シレンシオーサ(Luz Silenciosa)
公開:2007年
監督:Carlos Leygadas(カルロス・レイガーダス)
ストーリーは、メノー派教徒のコミュニティを通じて発展していく。ごく普通の家庭で、妻や多くの子供達と平和に暮らすジョアン。しかし、ジョアンには、他に愛する女性がおり、信仰やコミュニティのルール、自分自身の思いとの間で揺れ動き、葛藤を重ねながら生きていく。
役者は全て、メキシコ、ドイツ、カナダから集められた本当のメノー派教徒の信者を起用しているため、演技の枠を超えたリアリティを映画全体を通して感じ取ることができる。
2.エル・インフィエルノ(El Infierno)
公開:2010年
監督:Luis Estrada(ルイス・エストラーダ)
スペイン語で「地獄」と名付けられたこの映画は、2011年にメキシコのアカデミー賞であるアリエル賞で、最優秀作品賞と監督賞を取った作品。脚本・製作も全てルイス・エストラーダ監督自らが手がけている。舞台は、スペインからの独立200周年の年。アメリカから追放され、故郷に帰ってきたベンジャミン・ガルシアは、生まれ育った町が暴力と犯罪によって変わり果てた姿を目の当たりにする。
3.デスプエス・デ・ルシア※邦題:父の秘密(Después de Lucía)
公開:2012年
監督:Michel Franco(ミチェル・フランコ)
ミチェル・フランコ監督は、この作品で、カンヌ国際映画祭とサン・セバスティアン国際映画祭で特別賞を受賞した。物語は、ロベルトとその17歳の娘アレハンドラの間で展開していく。ロベルトは妻の死から立ち直ることができず、悲しみに打ちひしがれる日々を送っている。アレハンドラは、なんとか父親を助けようと奮闘するが、その傍ら、同級生達による彼女に対するイジメが次第にエスカレートしていく。
4.ヘリ(Heli)
公開:2013年
監督:Amat Escalante(アマット・エスカランテ)
内容が暴力的かつ衝撃的であるため、カンヌ映画祭で物議を醸し出した問題作。
舞台は、とあるメキシコの田舎の村。その村人達の人生には2つの道しか残されていない。工場で低賃金労働者として働き続けるか、それとも麻薬組織のために働くか。過酷な状況下で生きる人々の様子や心情を見事に表現している。
5.ラ・ハウラ・デ・オロ(La Jaula de oro)
公開:2013年
監督:Diego Quemada-Díez(ディエゴ・ケマダ・ディエス)
アメリカに入国することを夢見て、故郷のグアテマラからメキシコへと北上するフアン、サラ、サムエルの3人は、メキシコとの国境でチアパスの高地に暮らすツォツィル族のチャウクと出会う。3人は、チャウクとの友情や愛情を通して、恐怖や痛みを乗り越えていく。
6.グエロス(Güeros)
公開:2014年
監督:Alfonso Ruizpalacios(アルフォンソ・ルイスパラシオス)
アルフォンソ・ルイスパラシオス監督のデビュー作。アリエル賞では作品賞・デビュー作品賞・監督賞・音響賞・撮影賞の5部門を受賞。Roma(ローマ)と同じく白黒映画で、メキシコシティに住む若者たちの生活をセンチメンタルに表現している。
同じアパートに住むソンブラとサントスが、ソンブラの弟トーマスを向かい入れ、一緒に旅に出るところから、物語は展開し、次第に3人を取り巻く状況が変化していく。
7.ラ・リベルタ・デル・ディアブロ(La libertad del diablo)
公開:2017年
監督:Everardo Gonzáles(エベラルド・ゴンサレス)
エベラルド・ゴンサレスが、アリエル賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品。暴力と犯罪が横行するメキシコで、被害にあった被害者たちに迫る衝撃的なドキュメンタリー。激しく火傷を負ったマスクの男性。カメラをじっと見つめる表情が、私たちに強いメッセージを訴えかける。
8.ラ・カマリスタ(La Camarista)
公開:2018年
監督:Lila Avilés(リラ・アビレス)
メキシコシティの高級ホテルで客室係として働くイブ。宿泊客の裕福な生活を通して、自分と宿泊客の間に存在する決して埋まることのない格差を目の当たりにする日々を送る。そして、次第に止まることのない孤独に苛まれていく。
9.ムセオ(Museo)
公開:2018年
監督:Alonso Ruizpalacios(アロンソ・ルイスパラシオス)
ガエル・ガルシア・ベルナルの主演映画。物語は、1985年に実際にメキシコで起こった事件を元にしていて、ベルリン国際映画祭では銀熊賞 (脚本賞)を受賞した。毎日同じことの繰り返しで、何か物足りなさを感じている2人の学生が、そんなつまらない毎日を変えるため、メキシコシティにある国立人類学博物館に盗みに入る。翌日のニュースを見て、2人は自分たちが犯した罪の大きさに気づくが、もう後戻りはできない。犯人に怒り狂う父親、思うように売れない盗品、全ての歯車が崩れ落ちていく。
この映画は、YouTubeの配給で、YouTube Premium会員しか見ることができない非常に珍しい映画です。3ヶ月間の無料体験もやっていますので、無料期間中に観ることも可能です。
10.ローマ(Roma)
公開:2018年
監督:Alfonso Cuarón(アルフォンソ・キュアロン)
アルフォンソ・キュアロン監督・脚本・共同製作・共同編集による米墨合作のドラマ映画。第91回アカデミー賞では、外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞。メキシコの原住民と富裕層との間に存在する絆と格差を見事に表現した現代メキシコ映画の傑作です。この映画で主演を務めたYalitza Aparicio(ヤリッツァ・アパリシオ)は、シカゴ映画批評家協会賞、放送映画批評家協会賞、ハリウッド映画賞、ゴッサム賞、サンフランシスコ映画批評家協会賞、サテライト賞、女性映画批評家協会賞(英語版)の女優賞にノミネートされ、TIMEの表紙を飾ったり、強く生きる女性のアイコン的存在へと変貌をとげ、現在も様々な場所で原住民が抱える問題点や女性の生き方について講演を行なっている。
以上となります。最後までお読みいただきありがとうございます。