ライシージャ(Raicilla)とは一体何?

ライシージャとは、テキーラやメスカルと同じアガベを元に作られた400年以上の歴史を持つ蒸留酒です。2019年にテキーラ、メスカル、ソトル、バカノラ及びチャランダに次いで原産地呼称を取得しました。メキシコのハリスコ州の南西部(コスタ・シエラ・オクシデンタル ※下記画像の赤いハイライト部分)が原産地とされています。

メキシコのハリスコ州

2021年にフランスのスピリッツの大会(Top World Spirit Awards)で、メキシコの4つのライシージャの銘柄が金メダルを獲得したことで、世界的に注目を浴びつつあります。テキーラ、メスカルの次に来るのがこのライシージャと言われています。

受賞したアシエンダ・エル・ディビサデロのライシージャ


テキーラやメスカルとの違い

テキーラやメスカルとの主な違いは、使用しているアガベの種類となります。それにより色や味、口当たりなどが変わってきます。テキーラとメスカルにはアガベ・アスールが使われていて、特定の土地(ハリスコ州、ナヤリット州、ミチョアカン州など)だけで作られたものがテキーラ、それ以外の土地(オアハカ州、サンルイスポトシ州など)で作られたものがメスカルとされています。このようにテキーラとメスカルは同じ種類のアガベが使用されていますが、土地によって製法などが異なるため、味に違いが生まれています。その昔、テキーラはメスカルのワインと呼ばれていたそうです。

アガベ・アスール(Agave Tequilana)

ライシージャはアガベ・ベルデやアガベ・チコ・アギラルと呼ばれるアガベ・マキシミリアナ、アガベ・アングスティフォリアなどが主に使用されています。またライシージャは野生のアガベを主に使用しているという点が他のものと特に異なるポイントとなっております(※現在は野生のアガベの数が少なくなってきているため、植えられたアガベを使用している蒸留所も多くなってきています)。
これにより、テキーラやメスカルとは違い大量生産が非常に難しく、一つ一つ丁寧にハンドメイドされた希少なスピリッツとなっており、価格も少々割高です(※750mlのボトルあたり、5,000~10,000円程度が相場)。各ブランドによって異なりますが、ライシージャは総じてテキーラよりほんのり甘く、メスカルよりもスモーキーさが抑えられたような味わいとなっています。

アガベ・アングスティフォリア(©︎Santiago Barreido)

作り方

ライシージャは、下記5つの工程を経て作られます。最後の蒸留工程まで約3週間程度かかります。

①葉の切り落とし(Jima)

アガベの葉を斧やナイフで1つ1つ根元まで削ぎ落とします。全て切り落とすと、パイナップルのような見た目をした部分が残ります。これをピーニャ(スペイン語でパイナップルという意味)と呼び、このピーニャを使って生成しています。このヒマ(Jima)という工程を行う作業者はヒマドール(Jimador)と呼ばれています。1つのピーニャの重さは10キロ〜150キロあるとされていますので、かなりの重労働です。
尚、1リットルのライシージャを作るためには8キロほどのピーニャが必要と言われているので、1つのボトルのライシージャを作るためには、だいたい1つのピーニャが使われていることになります。

葉を少しづつ切り落としていくヒマドール

②蒸し焼き(Hornada)

ピーニャを専用の大きな焼き釜に入れて、蒸し焼きにしていきます。温度は蒸留所によってまちまちですが、800度近くになることもあるそうです。8時間程度焼き上げ、2、3日寝かせます。

丸太や石を使ってピーニャを焼き上げます

③粉砕(Majado)

焼き上がったピーニャを焼き釜から取り出し、専用の機械で粉々に砕いていきます。この作業で、ピーニャの蜜の部分と殻の部分を分けていきます。昔は手作業で行っていましたが、現在はこのように機械を使って行っているところもあります。

④発酵(Fermentación)

粉砕したピーニャを発酵専用の容器に入れます。1週間程度の発酵を2回行います。夏の暑い時期は期間が少々短くなります。

⑤蒸留(Destilación)

2つの異なる蒸留器を使って行います。植民地時代から使われているアラビア様式の蒸留器で2日間、4世紀前から使われているアジア様式の蒸留器で1日かけて丁寧に蒸留していきます。

アルコール度数

だいたい35%〜55%ぐらいのアルコール度数となっています。

飲み方

テキーラやメスカルと同じく、ショットで少しずつ飲むスタイルが主流ですが、オレンジやグレープフルーツジュース、甘いシロップを入れたりして飲まれることもあります。特にピンクグレープフルーツジュースと合わせたり、マルガリータ風にして飲んだりしても美味しいです。

タベルナの紹介

ライシージャの蒸留所にはタベルナ(Taberna)という大衆食堂のようなバー・レストランが併設されていることが多いです。蒸留工程を見学してから、タベルナでメキシコ料理と一緒にライシージャを味わうのが地元流です。

ハリスコ州の主なタベルナはサンセバスチャン・デ・オエステ近くのラ・エスタンシアという町からタクシーで5分ほどにあるアシエンダ・ドン・ラリンが一番有名なタベルナではないかと思います。その他にも、エル・トゥイートという町の近くにあるアシエンダ・エル・ディビサデロも結構しっかりとしたタベルナです。

アシエンダ・ドン・ラリン(Hacienda Don Lalin)

蒸留所が隣に併設されており、運が良ければ、実際にライシージャのピーニャを焼いているところなどを見学することができます。サンセバスチャン・デ・オエステという町の2,600メートルの山奥で作られた珍しいコーヒーなども飲むことができます。料理も結構美味しいです。

アシエンダ・エル・ディビサデロ(Hacienda El Divisadero)

エル・トゥイート(El Tuito)とう町からタクシーで約15分くらい行った山の中にあるタベルナです。非常に見晴らしがよく、空気も綺麗で、この環境で飲むライシージャは絶品です。コロナの影響で現在は営業停止しておりますが、コロナ前は毎日多くの人で賑わっていたようです。

主な銘柄

ベネノサ(Venenosa)

日本でも手に入れることができる、世界的に一番流通しているライシージャです。様々な種類のアガベを使い、様々な味のライシージャを作っています。

アシエンダ・エル・ディビサデロ(Hacienda El Divisadero)

Top World Spirit Awardsでも金賞を受賞しているメキシコ国内ではかなり知られている現在注目のライシージャです。黒色のラベルと赤色のラベルの2つのライシージャを展開しています。受賞したものは赤色のラベルのものです。比較的飲みやすく、非常にコクがあり、味わい深いです。

アシエンダ・ドン・ラリン(Hacienda Don Lalin)

ドン・ラリンさん(通称ラロさん)がプロデュースをしているライシージャです。アシエンダ・エル・ディビサデロと同じ大会で金賞を受賞しています。タベルナが非常に有名で、地元の人の他にも旅行者などもツアーで訪れたりしています。

バラム(Balam)

こちらもプエルト・バジャルタの酒屋などで買えるほど有名で、メキシコ国内で広く流通しているライシージャです。アルコール度数は他のライシージャとそこまで変わらないのですが、味が強めで、喉が少し焼ける感じがします。刺激の強いお酒が好きな方にはオススメです。メスカルなども作っています。

ウアラチェス・デ・オロ(Huaraches de Oro)

プレヒスパニック時代からの伝統的な製法を守り続けているライシージャです。比較的若めの男女が経営しており、流通数もどんどんと増えています。

ランチョ・カトルセ(Rancho 14)

こちらも比較的流通しているライシージャです。味に少々特徴があり、他のものにはないクリーミーさを感じる面白い味付けのライシージャです。

テソロ・デル・オエステ(Tesoro del Oeste)

こちらはサンセバスチャン・デル・オエステというプエブロマヒコにも登録されている非常に雰囲気のある町で作られているライシージャです。蒸留所は非常に小さく、手作りの数量限定で生産しています。蒸留所には小さなバーが併設されていて、テイスティングもさせてもらえます。

メキシコの地方都市で、時間をかけて丹念に作られた希少な蒸留酒ライシージャ。テキーラやメスカルとはまた違った魅力があり、これからのスピリッツを代表するお酒になっていくのではないかと思っております。

現在、様々な蒸留所を訪問し、ライシージャ販売に向けて準備中です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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